31番目のお妃様第31位王妃殿下
作者:桃巴
31番目の妃『にがーいお話し』第31位妃子『苦澀的故事』
原文連結漫畫生肉『にがーいお話し』『苦澀的故事』
ザバザバー 嚓啪嚓啪—
「おお、匂ってきたな!」「喔喔,味道出來了呢!」
「ちょっと、兄さん! クコの葉を入れるなら入れるって宣言してからにしてよっ……うっ、クハッ」「等一下,哥哥! 要放入庫克葉的話就要宣告要放了啦…… 唔,咳哈」
立ち込める臭気に、フェリアは口を手で覆い、鍋から遠ざかった。 面對瀰漫的臭味,菲莉亞用手摀住嘴巴,從鍋邊遠離。
フェリアだけでなく、ケイトもゾッドら騎士も遠巻きにしている。 不只是菲莉亞,凱特與佐多他們騎士也都在遠處圍觀。
その中でガロンだけが、平然と鍋をかき回していた。 那裡面只有加隆泰然地在攪拌著鍋子。
「さあ、今日は一日中煮詰めるぞ!」「好了,今天要熬煮一整天喔!」
「だから、嫌だって言ったのに!」「所以我明明說不要了!」
フェリアは涙目になり、ゾッドをなじった。 菲莉亞淚眼汪汪的責怪佐多。
嫌がるフェリアをなだめ、ガロンに鍋の作業をさせたのはゾッドである。 勸慰不願意的菲莉亞,讓加隆進行鍋作業的是佐多。
「私は、ビンズ隊長から作業を許可するように言われたまでです! うっ」「我甚至被賓茲隊長說要允許作業! 嗚」
大聲で反論したゾッドは思いっきり臭気を吸い込んだようだ。 大聲反駁的佐多似乎猛然吸入了臭味。
「ここでさせないでって言ったじゃない!」「不是說過不要在這裡做嗎!」
「まさか、丸薬作りがここまで臭いだなんて思っていなかったんです! うっはっ、いかん駄目だ」「我沒想過製作藥丸居然會臭到這個程度! 嗚哈,不好不行了」
ゾッドは駆け出した。門扉に向かって一目散に。 佐多跑出去。一溜煙地朝向門扇。
「うっわ、ひとりだけ抜け駆けはずりーよ」「嗚哇,只有一個人跑掉好狡猾唷」
他の警護騎士も駆け出した。 其他護衛騎士也跑出去了。
ソーッとケイトもついていく。 凱特也迅速地跟了上去。
「ちょっと! 私の警護はどうするのぉぉ。きゃっ」「等一下! 我的護衛該怎麼辦。呀」
フェリアは叫びながら、皆を追おうとするも、ガロンにむんずと腕を摑まれる。 菲莉亞一邊大叫,一邊打算追上眾人,卻被加隆猛力抓住手臂。
「なーに逃げてんのかな?」「怎-麼是要逃跑嗎?」
「ひっ」「唏」
ドロッドロの液體のついたしゃもじをガロンはフェリアの手に持たせた。 加隆把附著著黏糊糊液體的勺子讓菲莉亞拿在手上。
「さあ、疲れた皆に飲ませる丸薬だ。おおいに頑張ろうじゃないか、妹よ」「來吧,讓疲憊的眾人服用的藥丸。不是非常努力嗎,妹妹呀」
フェリアは、ニタリと笑うガロンの意図を瞬時に理解し、同じ笑みになる。 菲莉亞瞬間理解了奸笑著的加隆的意圖,轉變為同樣的笑容。
「ええ、そうね。長期間警護している騎士に、飲ませてあげなきゃね」「對,也是呢。必須要讓長時間做著護衛的騎士們服用呢」
ニッタリ、ニッタリと笑みながら、鍋をかき回す二人は、さながら悪魔と魔女のような雰囲気だ。 一邊壞壞地奸笑,一邊攪拌鍋子的兩人,宛如是惡魔與魔女般的氣氛。
門扉からゾッドらは、悪寒を感じながら眺めていた。 來自門扇的佐多一邊感到惡寒一邊眺望著。
そして…… 然後……
「グッハッ」「咕哈」
最初の犠牲者は、いやありがたく丸薬のお世話になったのは、ゾッドである。 最初的犧牲者、不、幸運受到藥丸關照的是佐多。
「妹を荒事から守っていただいて、感謝します。さあ、ゾッド殿、お口を開けてください」「非常感謝你把妹妹從暴力行為中保護下來。來吧,佐多殿,請把嘴巴打開」
悪魔なガロンから、ゾッドの口に丸薬が投入され、ゾッドは口を押え奇妙に體をくねらせながら、薬草畑に身を埋めた。 來自惡魔加隆的藥丸被丟進佐多嘴裡,佐多壓著嘴巴一邊奇異地彎曲身體,一邊埋身於藥草田裡。
うっわー、大変だなあと、傍観者であった二人の警護騎士の口にも、ガロンは容赦なく丸薬を放り込んだ。 說著嗚哇,真不得了後,身為旁觀者的兩位護衛騎士嘴裡,也被加隆毫不留情的投入藥丸。
そして、ケイトにはフェリアがにじりよる。 然後凱特是被菲莉亞一點一點逼近。
「わ、わたしは! この通り元気ですので」「我、我呀! 就像這樣很健康的」
そう叫んだケイトの口に、フェリアは丸薬をポイと入れる。 菲莉亞將藥丸拋進如此大叫的凱特嘴裡。
「もう、ケイトったらご謙遜がお上手ですこと」「真是的,凱特說得真謙虛」
「モゴッ」「姆叩」
ケイトは口を両手で押えた。 凱特用雙手壓住嘴巴。
「皆さん、これを指示したビンズにも飲ませてあげたいわね?」「各位,想不想讓做了這個指示的賓茲也服用呢?」
悪どい笑みのフェリアとガロンに、皆が涙目で大きく頷いた。 眾人淚眼汪汪的對惡毒的笑著的菲莉亞與加隆大大點頭。
何も知らないビンズが門扉をくぐる。そして、ビンズも丸薬のお世話になったのだが…… 什麼都不知道的賓茲穿過門扇。然後,賓茲雖然也受到了藥丸的關照……
「ケホッ、ケホッ、丸薬作りは王様のご指示ですよ」「咳呵、咳呵,製作藥丸是國王陛下的指示啦」
「まあ! マクロン様が?」「哇啊! 是馬庫隆大人?」
「効き目抜群苦い丸薬のお話しを、以前フェリア様は王様になさったではないですか? ケホッ……、それで、ガロン様がいらっしゃるなら作ってほしいとおっしゃいまして、ケホッ、ああー臭いし、苦い! 備蓄薬の予定だったのですが、これじゃあ保管できませんね」「效果拔群的苦澀藥丸的話題不就是以前菲莉亞大人跟國王陛下說的嗎? 咳呵……,而且,還說了加隆大人來了的話希望能製做,咳呵,啊啊—好臭、好苦! 雖然是預定的儲備藥物,但這樣就不能保管了呢」
「乾燥前の生の丸薬は苦いだけじゃなくて、臭いもの。乾燥してしまえば、口に入れなきゃ臭みは感じないわ。そう……マクロン様の依頼なのね。フ、フフフ」「乾燥前的新鮮藥丸不只是苦,還很臭。乾燥好了的話,只有放進嘴裡才會感到苦喔。是嘛……是馬庫隆大人的委託呢。呵、呵呵呵」
フェリアの顔が悪戯っ子のように変わる。 菲莉亞的表情變得彷彿惡作劇的孩子。
「ダナンで一番心身を酷使していらっしゃる王様に! マクロン様に御賞味していただきましょう」「給在達南最操勞身心的國王陛下! 給馬庫隆大人好好嚐嚐味道吧」
ニタ、ニタニタ、ニタリニタリ、ニッタリニッタリと、皆の顔が変わっていく。さあ、次の犠牲者は王マクロンである。 眾人的表情逐漸變成了笑、壞笑、壞心的笑、笑到壞掉了。來吧,下個犧牲者就是國王馬庫隆。
『マクロン様のため、丹精込めて作りました丸薬です。どうぞ御賞味ください。フェリア』『這是為了馬庫隆大人,精心製作的藥丸。還請好好品嚐味道。菲莉亞』
マクロンはフェリアの文に笑みを溢す。 馬庫隆對菲莉亞的信笑容滿溢。
「王様、こちらでございます」「國王陛下,在這裡」
ビンズが仰々しくトレーを持っている。フードカバーがされ、匂いはもれていない。 賓茲誇張的拿著托盤。被蓋著餐巾,味道沒有漏出來。
「では、いただこうか」「那麼,要服用嗎」
ビンズがテーブルにトレーを置く。いつもなら數歩下がるだけだが、『どうぞ』と促すと、ササササッと戸口に近い所まで遠ざかった。 賓茲將托盤放在桌子上。平時的話只會退後數步,但催促『請用』後,就迅速地遠離到接近窗口的地方。
しかし、マクロンは気にもとめず、躊躇なくフードカバーを持ち上げた。 可是,馬庫隆沒有在意,毫不猶豫的掀起餐巾。
「ん?」「嗯?」
マクロンの鼻がピクンと反応する。 馬庫隆的鼻子反應著受到刺激。
「フェリア様が丹精込めて作りました丸薬にございます! ささっ、一気に飲み込んでください」「這是菲莉亞大人精心製作的藥丸! 請盡快一口氣吞下去」
遠く戸口から聞こえるビンズの聲を、マクロンは一瞥しその様子を睨む。 馬庫隆聽到來自遠處窗口的賓茲的聲音,瞥了一眼瞪著那個樣子。
ビンズは戸口で鼻を摘まんでいた。 賓茲在窗口捏著鼻子。
「さっさと飲み込んで、お返事を!」「趕快吞下去,做好回覆!」
ビンズの聲は叫びに近かった。 賓茲的聲音接近於大吼。
マクロンはフェリアの文を再度見る。なるほど、悪戯顔が想像される。これはフェリアからの挑戦なのだろうと、マクロンは不敵に笑った。 馬庫隆再度看著菲莉亞的信。原來如此,能想像惡作劇的臉。這是來自菲莉亞的挑戰吧,馬庫隆無畏地笑了。
丸薬を摘まむと、口に放り込み飲み込む。 捏起藥丸後,放進嘴裡吞下去。
「確かに、臭く苦いな……グッ」「的確又臭又苦呢……咕」
聲を出すと臭気がもれる。それでも、マクロンはのたうち回ることはなかった。 發出聲後就漏出了臭味。即便如此,馬庫隆也沒有滿地打滾。
「流石、王様です。皆、地に沈みましたが、大丈夫ですか?」「不愧是國王陛下。大家都在地上爬不起來了,不要緊嗎?」
マクロンはニヤッと笑う。 馬庫隆咧嘴一笑。
「お返しをせねばな。グッ」「需要回禮呢。咕」
口を手で覆いながら、マクロンは仕返しを、いやお返しを、とびっきりのお返しを考え付いていた。 馬庫隆一邊摀住嘴巴,一邊思考著要好好報復、不對是回禮,優秀的回禮。
「フェリア様、王様から昨日の丸薬のお禮の品でございます」「菲莉亞大人,這是來自國王陛下昨天藥丸的禮物」
ビンズはまたもトレーを持っている。 賓茲再次拿著托盤。
フードカバーがされたそれに、フェリアは『ひっ』と悲鳴をあげた。 菲莉亞對蓋上餐巾的那個發出『唏』的慘叫。
丸薬がいかに兇暴か分かっているだけに、マクロンからの返禮品は、きっとフェリアを困らせる物であると想像できるからだ。 因為只要知道藥丸多麼地兇暴,就能想像來自馬庫隆的答禮,一定是會讓菲莉亞困擾的東西。
マクロンのお禮返し……フェリアは口角をヒクヒクとさせて笑ってみせた。 馬庫隆的答謝……菲莉亞展露出嘴角微微抽搐的笑容。
「ま、まあ。嬉しいわ」「哇、哇啊。我很高興喔」
ビンズがニヤッと笑った。 賓茲咧嘴一笑。
フェリアはその表情にまたも、冷や汗をかく。 菲莉亞對那表情再次流出冷汗。
「そう、お構えしなくても大丈夫です」「是嘛,就算不防備也不要緊」
ビンズはテーブルにトレーを置くと、フェリアにマクロンからの文を渡した。 賓茲將托盤放在桌上後,把來自馬庫隆的信交給菲莉亞。
『私からは甘薬を贈ろう。一緒に口直ししようか。つまみ食いせず待っているように。マクロン』『由朕來贈與甜藥吧。要一起換換口味嗎。別偷吃好好等著。馬庫隆』
ビンズは、フェリアの目線が文から上がるタイミングでフードカバーを開けた。 賓茲在菲莉亞的視線從信上抬起的時機掀開餐巾。
「まあ! 素敵」「哇啊! 好棒」
ガラスの器に、カラフルな物體が盛られている。 玻璃容器裡盛裝著色彩斑斕的物體。
「これが甘薬?」「這就是甜藥?」
「星くず菓子こんぺいとうと呼ばれる砂糖菓子でして、最近遠國から伝わり、城下町で流行しております。王様は、朝の政務のあといらっしゃいますので、どうぞお待ちを」「是被稱為星塵點心金平糖的糖果,最近從遠方國度傳來,在城下町很流行。國王陛下會在早上的政務之後過來,還請稍候」
一時フェリアが砂糖菓子を眺めていると、マクロンが現れた。 菲莉亞暫時眺望著糖果後,馬庫隆出現了。
「気に入った?」「很中意嗎?」
「ええ!」「對!」
「つまみ食いはしていない?」「有沒有偷吃?」
フェリアは唇を尖らせ、『そんなことしていません』と答えた。 菲莉亞嘟嘴回答說『才不會做那種事』。
「じゃあ、口直しするか」「那麼,要來換換口味嗎」
「フフ、楽しみです」「呵呵,我很期待」
マクロンが砂糖菓子を一粒摘まむ。 馬庫隆挾起一粒糖果。
「さて、文にしたためたように“一緒に”口直しをしようか」「好了,要來像信上所寫的“一起”換換口味嗎」
マクロンは砂糖菓子を唇に挾むと、フェリアを抱き寄せ、びっくりするフェリアの表情を楽しみながら、顔を近づける。 馬庫隆將糖果夾在嘴唇裡後,把菲莉亞抱過來,一邊享受菲莉亞嚇了一跳的表情,一邊把臉靠過去。
あまーい砂糖菓子が二人の口で溶けた。とろけた? 甜甜的糖果在兩人口中溶化。陶醉了?
甘味を殘しながら、砂糖菓子が消えると、やっとマクロンの唇はフェリアから離れた。 糖果一邊留下甜味一邊消失後,馬庫隆的嘴唇終於從菲莉亞那離開。
「悪戯っ子にお仕置き」「給惡作劇孩子的懲罰」
マクロンはへにゃりと體の力が抜けたフェリアの耳もとで告げた。 馬庫隆在全身虛脫無力的菲莉亞耳邊告知。
ダナン國で、丸薬とともに砂糖菓子が処方されるようになったのは、王様のお仕置きが発端であった。 在達南國,糖果會與藥丸一起被作為處方,是以國王陛下的懲罰為發端。
あまーいお話しに変わり、終わり。 變成甜甜的故事,結束。
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2018/6/15
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